本拠点の紹介

趣旨・目的

高齢化、震災、環境問題、経済危機など世界共通の先端課題への取り組みにおいて、多様な価値観や知見を活かして社会イノベーションを創出するための知識体験としての「紛争解決学・合意形成学」のアジアにおける研究拠点形成を行う。具体的には、(1)世界共通の先端課題の合意形成にかかる社会実験研究センターの形成、(2)紛争解決・合意形成のアジアからの知見を発信する国際比較研究センターの形成、(3)紛争解決・合意形成の理論・手法・実践ケース集積の国際研究センターの形成を行っていく。

概要

  1. (1)
    世界における先端課題の合意形成にかかる社会実験研究センターの形成
    高齢化、震災・災害、環境問題、経済危機といった世界共通の先端社会課題を解決するための合意形成モデルを開発し、蓄積するセンターの構築を行ってきた。
  2. (2)
    「紛争解決・合意形成の国際比較研究センター」の形成
    紛争解決や合意形成の行動様式は文化あるいは社会制度に大きく依存する。そこで、a. 欧米で生まれた現代の紛争解決学手法に対し、欧米圏以外で機能する手法について比較制度論、比較文化論の観点から知見を蓄積してきた。また、b.もともと調和を大切にする日本やアジア文化の「知恵」を抽出し、欧米社会に発信することを目指した。
  3. (3)
    「紛争解決・合意形成の理論・手法・実践ケース集積の国際研究センター」の形成
    紛争解決・合意形成学の理論・手法については、世界的にみても、学派ごとに偏りがあり、相互の交流が少ないため、熊本大学の拠点では、世界中の様々な学派による理論と手法、その実践例に関する情報を集積し、ウェブサイトや公開セミナーなど、研究者や一般市民が活用可能な形で整理し公表した。

紛争解決学・合意形成学の拠点形成研究 中間成果全体像

紛争解決学・合意形成学の拠点形成研究 中間成果全体像

成果及び効果

 (1)については、特に、世界的関心をあつめる福島原発災害による紛争の解決と合意形成の道筋に関して、アクションリサーチと合意形成実践事例収集を行い、世界からも注目される知見を得た(国連大学でセミナーとして社会還元され、出版準備中)。また、高齢化対策と震災復興の社会イノベーションに関して、熊本諸地域をフィールドに合意形成実験を実施中である。(2)aについては、1)の福島の事例や、医療政策合意形成実験、熊本地震における紛争解決フィールド研究によって、欧米型とは異なった紛争解決モデルを開発した。具体的には、異なった意見をぶつけ合うディベート型合意形成ではなく、内省型変容を活用した合意形成モデルを開発した。(2)bについては、日本の文化人類学者で、日本社会のコミュニケーション要素を活用して米国で紛争解決の知見を確立した世界的な紛争解決の研究者であるDr.J. Beerと共同研究を行った。(3)については、連続研究会・ワークショップの実施により、世界の紛争解決手法の第一人者を招聘して講演やワークショップを行い、その成果をウェブサイトや論文、社会貢献事業として、一般社会に還元した。

 研究論文等も合計82本、そのうち国際論文が2割以上を占めるなど成果を上げてきている。若手のメンバー2名が期間中に新たなポジションを得、博士後期課程の学生も国際会議での発表の機会を得るなどの、若手育成でも成果を上げた。